祖父の本
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会ったことも、
声を聞いたこともない、
顔も知らない祖父の話を聞いたのは中学生の頃でした。
私が生まれるずっと前、
今から60年ほど前に他界している祖父は、
戦前から建築技師として本を何冊も世に送り出していました。
本を読むのが好きだった私は、
その話を聞いて、
「いつか自分も何かの本を出版したい」と
漠然と思うようになりました。
大人になってから古本屋から取り寄せた祖父の本は、
日本家屋の作り方、洋風な家具から和箪笥、庭園、
神社や寺院の建築法に至るまで、細かく書き記されています。
そして、重要なところに線が引いてあったり、
メモしてあったり、ページの角が折れていたり、
きっと当時の職人さんや建築に携わる人たちが、
この本を読んで、お仕事に活用されていたんだなぁと
感慨深い気持ちになりました。
祖父の思いが詰まった1節。
「諸君は捕らわれずにもっと自由に意匠を考案して造ればよい」
建築のことはよくわかりませんが、
40代という若さで他界するまで、寝る間も惜しんで、
仕事に没頭し、日本の建築技術を後世に伝え続け、
その道の先駆者として時代を駆け抜けた祖父。
その祖父のエネルギーに触れることのできる
この古本は私の宝物となり、ひとつの夢となりました。
どこかの誰かの役に立ったり、
動物たちの素晴らしさに気づいてもらえたり、
たくさんの希望を与えられるような1冊として、
誰かのお宅の本棚にそっと並び、
必要なときに読んでもらえる。
そんな本になったらこの上なく幸せです。
森永達男 様
夢を与えてくれて、ありがとうございます。
あなたの孫より